「このまま行くと、いくらで着地しそう?」
営業企画や管理職なら、一度は聞かれたことがあるフレーズでしょう。
Excelで実績を集計するのは得意でも、“未来を読む”となると急に難しく感じる――そんな声を多く聞きます。
今回は、ExcelでPL(損益)着地見込みを“見える化”する方法を解説します。
過去から未来へ。数字を「記録」から「予測」に変えるフェーズです。
七段活用⑤:着地見込みを問われるフェーズ
① 進捗がつまずく
② 全体の進捗が出せるようになる
③ KPIを問われて詰められる
④ KPIを分解して説明できる
⑤ 詳細分析が求められる
⑥ 着地見込みを問われる ← 今回
⑦ PLとの連動に至る
この段階では、「数字の変化を説明する」から一歩進み、「今後どうなるかを示す」ことが求められます。
Excelの役割が“記録ツール”から“意思決定ツール”に変わる瞬間です。
着地見込みとは何か?
着地見込みとは、「現時点の進捗と傾向から見た最終見込み額(または数値)」です。
営業・経理・経営企画など、あらゆる部門がこの数字を基に動きます。
よくある間違いは、「過去平均で単純予測」すること。
現場では、波・季節性・施策効果など、常に“変動”があります。
そのため、進捗率×時期補正×直近傾向の3要素で見込みを算出するのが実務的です。
Excelで作る着地見込みの基本式
シンプルですが、非常に使える考え方です。
着地見込み = 現時点の実績 + (残期間 × 直近平均ペース)
これを売上・経費・利益など各項目で設定しておけば、PL全体の「見込み着地」を可視化できます。
例:
| 項目 | 今期目標 | 現時点実績 | 月次平均 | 残月 | 見込み | 達成率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12,000,000 | 8,200,000 | 1,000,000 | 3 | 11,200,000 | 93% |
| 営業利益 | 2,000,000 | 1,100,000 | 250,000 | 3 | 1,850,000 | 92% |
この表を自動更新できるようにしておくと、経営資料の更新が数クリックで済みます。
進捗率と補正係数を組み合わせる
実務では、単純な平均では精度が足りません。
特に季節性や施策時期がある場合、補正係数を入れることで現実的な見込みになります。
例:
- 過去3ヶ月の平均売上が年間平均より20%高い → 補正係数1.2
- 閑散期は過去平均の0.8倍で見積もる → 補正係数0.8
式で表すと:
着地見込み = 現時点実績 + (残期間 × 直近平均 × 補正係数)
補正係数を組み込むことで、見込みが「経験に基づく合理的予測」へ進化します。
AIを使って補正係数を導く
AIに過去データを与えると、補正値や傾向を自動的に算出できます。
ChatGPTやCopilotなどのAIツールを次のように活用します。
「この月次データから来月の売上を予測する回帰式を作って」
「この列のトレンド傾向(増加・減少・横ばい)を要約して」
AIは正確な未来予測よりも、“どの要素が効いているか”を発見する分析補助として使うのがコツです。
PL見込みのダッシュボード化
着地見込みをシートで完結させず、グラフやカード形式で見える化することで、報告・会議用の資料にも直結します。
- 棒グラフ:実績/見込み/目標の比較
- ゲージ:達成率(%)
- トレンド線:期間別推移+未来予測ライン
Power Queryやピボットを組み合わせると、自動更新+ワンクリック出力も可能です。
テンプレート予告
次回の記事で、以下のテンプレートを配布予定です。
- Gridder_PL着地見込みテンプレート.xlsx
- 進捗率・平均ペース・補正係数を自動計算
- 達成率・予測グラフ付きダッシュボード構成
実務現場でも即使えるフォーマットです。
Gridderとしての考え方
“数字を説明できる人”から“数字で未来を描ける人”へ。
その変化が、Excelを単なるツールから、経営の羅針盤に変える一歩です。
つまずきは、成果の入口だ。
今日の1行の数式が、明日の判断を変えるかもしれません。
次回予告:七段活用⑦「PLとの連動に至る」へ
次回は、いよいよシリーズ最終回。
PLと現場データを連動させ、Excelを“経営設計の言語”として扱う段階に進みます。
Gridder ― つまずきは、成果の入口だ。
Excel×実務×AIで、泥臭く登り続ける人を応援します。
カテゴリー: Excel実務
タグ: 着地見込み, 予実管理, PL分析, AI予測, ダッシュボード



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