「説明はできるようになった。でも、分析が浅いと言われる」――多くの現場で耳にする課題です。
数値の変化は語れるようになった。次は、なぜ・どこで・どれくらい起きているのかを、もう一段深く掘る段階です。
七段活用④:詳細分析が求められるフェーズ
① 進捗がつまずく
② 全体の進捗が出せるようになる
③ KPIを問われて詰められる
④ KPIを分解して説明できる
⑤ 詳細分析が求められる ← 今回
⑥ 着地見込みを問われる
⑦ PLとの連動に至る
ここから先に進む鍵は、“仕組みで深掘る”こと。手作業ではなく、再現可能な分析フローを作ります。
手段①:関数で「切り口」を増やす(再現性のある深掘り)
同じデータでも、切り口が増えるほど洞察は深まります。おすすめの関数は次の通り。
- XLOOKUP / INDEX+MATCH: 任意のキーで指標を引き当てる(担当者・製品・期間など)
- FILTER / UNIQUE / SORT: 条件抽出・ユニーク化・並べ替えで「群」を作る
- TEXTSPLIT / TEXTJOIN: フリーテキストや複数タグ列を整形して扱える形にする
- LAMBDA: 自社ロジックを「関数化」して全シートで使い回す(新Excel)
互換性が必要なら、INDEX+MATCH・SUMIFS・COUNTIFS中心に設計。最新環境ならFILTER/UNIQUEで設計が簡潔になります。
手段②:Power Queryで「整形を自動化」する
詳細分析では、整形の手戻りが深掘りのボトルネックになりがち。Power Queryで「取得 → 変換 → ロード」を自動化すると、毎回の前処理がクリック一発になります。
- 取り込み:CSV/Excel/SharePoint/フォルダ監視など
- 変換:列の分割・結合、型変換、不要行除去、結合(Join)
- ロード:分析用テーブルに出力(ピボットのデータソースに)
手段③:AIで「仮説→検証」を短時間で回す
AIは答えを出すより、仮説を増やすのに役立ちます。次のような使い方が現実的です。
- 「この列の説明変数候補は?」→ 切り口の提案をもらう
- 「異常値の疑いがある行の条件式を作って」→ Excel式化
- 「要因分解の観点を10個」→ 見落としの洗い出し
※個人情報や機微情報は匿名化・マスキングして利用を。社内規程も遵守しましょう。
実務で効く深掘りパターン(テンプレ思考)
1) 異常検知(Zスコア)
平均からの乖離をスコア化。±2を超えたらアラートなど。
| 日付 | 商談数 | 平均 | 標準偏差 | Zスコア | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9/01 | 18 | 20.5 | 3.1 | -0.81 | 通常 |
| 9/02 | 12 | 20.5 | 3.1 | -2.74 | 要注意 |
Excel式例:=(B2-$C$2)/$D$2(平均C2・標準偏差D2を別セルで計算)
2) 季節性・トレンド(移動平均)
7日・4週移動平均で短期ノイズを平滑化。増減の傾向を掴みます。
3) ボトルネック特定(パレート分析)
要因別に並べ、累積比率80%までを可視化。「どこを直せば効くか」を一目で。
4) コホート分析(起点別の推移)
初回接点月×経過月のマトリクスで、追跡的に率や単価を比較。
ワークフロー:深掘りが回る5ステップ
- データを整える: Power Query / クレンジング関数で前処理を固定化
- 切り口を増やす: 担当・商材・チャネル・期間などの次元を明確化
- 指標を設計: 件数・率・単価・LTV・滞留日数などを定義
- 差分と寄与: 前期比・寄与度(数量/率/単価)をセットで見る
- 仮説と検証: AIで仮説列→ Excelで検証 → 次の施策へ
サンプル:差分×寄与の最小セット
| 指標 | 先月 | 今月 | 変化 | 寄与メモ |
|---|---|---|---|---|
| 商談件数 | 100 | 85 | -15 | 数量要因(新規流入減) |
| 受注率 | 30% | 33% | +3pt | 質要因(提案質改善) |
| 平均単価 | 400,000 | 410,000 | +10,000 | 単価要因(アップセル) |
この「差分×寄与」を固定パーツ化すれば、毎月の深掘りが短時間で回ります。
配布予告:Gridder_AI活用KPIテンプレート(基本版)
- 異常検知(Zスコア)・移動平均・パレートの3点セット
- Power Queryでの前処理・ピボット連動
- 最新Excel(FILTER/UNIQUE)と互換版(SUMIFS中心)の2系統
次回の記事で公開予定です。
Gridderとしての考え方
深掘りは、センスではなく仕組みで再現できます。
泥臭く、でも確実に回るフローを作ることが、成果を安定させます。
つまずきは、成果の入口だ。 今日の一歩が、明日の再現性になります。
次回予告:七段活用⑥「着地見込みを問われる」へ
次回は、予実差から先の「未来」を扱います。
Excelで着地見込み(フォーキャスト)を“見える化”する設計術を解説します。
Gridder ― つまずきは、成果の入口だ。
Excel×実務×AIで、泥臭く登り続ける人を応援します。
カテゴリー: Excel実務
タグ: 詳細分析, Power Query, KPI, 異常検知, パレート分析


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